つ》した鍋《なべ》、すべてを与え、すべてを投げ込み、すべてを押し入れころがし掘り返し破壊しくつがえし打ち砕いたのである。舗石《しきいし》、泥土、梁《はり》、鉄棒、ぼろ、ガラスの破片、腰のぬけた椅子《いす》、青物の芯《しん》、錠前、屑《くず》、および呪詛《じゅそ》の念などから成っていた。偉大であり、また卑賤であった。渾沌《こんとん》たるものが即座に作った深淵《しんえん》であった。大塊に小破片、引きぬかれた一面の壁にこわれた皿、あらゆる破片の恐るべき混和、シシフォス([#ここから割り注]訳者注 地獄の中にて絶えず大石を転がす刑に処せられし人―神話[#ここで割り注終わり])はそこにおのれの岩を投げ込み、ヨブはそこにおのれの壜《びん》の破片を投げ込んでいた。要するにまったく恐ろしいものだった。浮浪の徒の堡塁《ほるい》だった。くつがえされた多くの荷馬車はその斜面を錯雑さしていた。大きな大八車が一つ、車軸を上にして横ざまに積まれて、紛糾した正面に一つの傷痕《きずあと》をつけてるかのようだった。乗り合い馬車が一つ、砦《とりで》の頂にむりやりに引き上げられ、あたかも荒々しい砦の築造者らが恐怖に悪戯を添
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