心の中に私をつなぎ止めてる一筋の綱があります。ことに老年になるとその綱がますます丈夫になるものです。まわりの生活がすべてこわれかけてくるのに、その綱だけは頑固に残ります。もし私が、その綱を払いのけ、それを断ち切り、その結び目を解くか切り捨てるかして、遠くへ立ち去ることができてたら、私は救われたでしょう。ただ出立つするだけでよかったでしょう。ブーロア街に駅馬車もあります。そうすれば、あなたは幸福になり、私は行ってしまうだけです。で私はその綱を切ろうとつとめ、引きのけようとしたが、綱は丈夫で、中々切れるどころではなく、私の心をいっしょに引きもぎろうとするのです。その時私は、他の所へ行って生活することはできないと思いました。どうしても他へは行けません。で、なるほどあなたの言われるのは道理です、私はばかです。このまま黙ってここにいればいいわけです。あなたは私に室《へや》を一つ与えて下さるし、ポンメルシー夫人は私を愛して、あの人をいたわっておくれと安楽椅子《あんらくいす》に言って下さるし、あなたのお祖父《じい》様は私がここにいさえすればよろしいとおっしゃるし、私がそのお相手となり、皆いっしょに住
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