の瞬間を知らない者は、およそ世にあるまい。そういう時人は、いつも的はずれのことをでたらめに口にする。世には突然意外なことが現われてくることもあって、人はそれにたえ得ないで、強烈な酒を飲んだように酔わされてしまう。マリユスは新たに現われてきた自分の地位に惘然《ぼうぜん》としてしまって、ほとんど相手の自白を難ずるがような口のきき方をした。
「ですが、」と彼は叫んだ、「なぜあなたはそんなことを私に言うのです。だれに強《し》いられて言うのです。自分ひとりで秘密を守っておればいいではありませんか。あなたは告発されてもいず、捜索されてもいず、追跡されてもいないではありませんか。自ら好んでそんなことを打ち明けられるのには何か理由があるでしょう。言っておしまいなさい。何かあるでしょう。どういうつもりで自白をなさるのです。どういう動機で?」
「どういう動機?」とジャン・ヴァルジャンは、マリユスに話しかけるというよりもむしろ自分自身に話しかけるような低い鈍い声で答えた。「なるほど、この囚徒が私は囚徒ですと言ったのは、どういう動機からかと、そうです、妙な動機でです。それは正直からです。不幸なことですが、私の
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