続けた。
「私はあなたの結婚の席にいない方がよかったのです。できるだけ出席しないようにつとめました。私は偽証をしないために、結婚の契約書に無効なものをはさまないために、署名することをのがれるために、怪我《けが》をしたと嘘《うそ》を言いました。」
マリユスは口ごもった。
「どういうわけですか。」
「そのわけは、」とジャン・ヴァルジャンは答えた、「私は徒刑場にはいったことがある身だからです。」
「そんなことが!」とマリユスは恐れて叫んだ。
「ポンメルシーさん、」とジャン・ヴァルジャンは言った、「私は十九年間徒刑場にいました。窃盗のためにです。次に無期徒刑に処せられました。窃盗のためにです。再犯としてです。今では脱走の身の上です。」
マリユスはいたずらに、現実の前にたじろぎ、事実を拒み、明確を排しようとしたが、しかもその本意を屈しなければならなかった。彼はようやくいっさいを了解し始めた。そしてかかる場合の常として、言外のことまで了解した。内心にさしてきた嫌悪《けんお》すべき光に彼は戦慄《せんりつ》を覚えた。慄然《りつぜん》たる一つの観念が彼の精神を過《よ》ぎった。自分にあてられてる一つの
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