マリユスはコゼットを所有していた。彼らはすべてを、富をさえも得ていた。しかもそれは彼が自らなしてやった業だった。
 しかし、今現に存在し今そこにあるその幸福に対して、彼ジャン・ヴァルジャンはどうしようとしていたのか。彼はその幸福の仲間にはいってもよかったであろうか。それを自分のものであるかのように取り扱ってもよかったであろうか。確かにコゼットは他人のものであった。しかし彼ジャン・ヴァルジャンは、自分が保有し得るだけのものをコゼットから保有してもよかったであろうか、推定されたものではあるがしかし大切にされていた父たるの地位に、彼は今までどおり止まっていてもさしつかえなかったであろうか。平然としてコゼットの家にはいり込んでもよかったであろうか。その未来の中に自分の過去を、一言も明かさずに持ち込んでもよかったであろうか。当然であるかのようにそこに出てゆき、素性を隠しながらその輝く炉辺にすわっても、さしつかえなかったであろうか。彼らの潔《きよ》い手を自分の悲惨な手のうちに、ほほえみながら取ってもよかったであろうか。ジルノルマン家の客間の平和な炉火の前に、法律の不名誉な影をあとに引きずってる自分
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