悪罵《あくば》の声をかけ始めた。それは仮装の者らに対する群集の愛撫である。今言葉をかわしたふたりも、仲間の者らといっしょに、衆人に立ち向かわなければならなかった。彼らは道化者のあらゆる武器を持っていたが、無数の人々の悪謔《あくぎゃく》を相手にして他を顧みるの余裕がなかった。そして仮装の者らと群集との間に激しく諧謔《かいぎゃく》がかわされた。
 そのうちに、同じ馬車に乗っていた他の仮装のふたり、すなわちお爺《じい》さんのふうをしてばかに大きな黒髭《くろひげ》をつけてる鼻の大きなスペイン人と、黒ビロードの仮面をつけてるごく若いやせたはすっぱ娘とが、やはり婚礼の馬車に目を止めて、仲間の者らと道行人らとが互いに野次りかわしてる間に、低い声で話をした。
 彼らのふたりの内緒話は、喧騒《けんそう》の声に包まれて他にもれなかった。去来する雨に、あけ放してある馬車の中はすっかりぬれていた。それに二月の風はまだ寒い。スペイン人に答えながら、首筋をあらわにしたはすっぱ娘の方は、震え笑いかつ咳《せき》をしていた。
 その会話は次のとおりだった。([#ここから割り注]訳者注 以下の会話は隠語を交じえたものと想
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