に集まってしまった。彼の顔は既に青ざめていたが、更に一抹《いちまつ》の血の気《け》もなくなった。
 彼は五人の方へ進んだ。五人の者は微笑して彼を迎え、テルモピレの物語の奥に見らるるあの偉大なる炎に満ちた目をもって、各自彼に叫んだ。
「私を、私を、私を!」
 マリユスは惘然《ぼうぜん》として彼らをながめた。やはり五人である! それから彼の目は四着の軍服の上に落ちた。
 その瞬間、第五の軍服が天から降ったかのように、四着の軍服の上に落ちた。
 五番目の男は救われた。
 マリユスは目を上げた。そしてフォーシュルヴァン氏の姿を認めた。
 ジャン・ヴァルジャンはちょうど防寨《ぼうさい》の中にはいってきたところだった。
 様子を探ってか、あるいは本能によってか、あるいは偶然にか、彼はモンデトゥール小路からやってきた。国民兵の服装のおかげでたやすくこれまで来ることができた。
 反徒の方がモンデトゥール街に出しておいた哨兵《しょうへい》は、ひとりの国民兵のために警報を発することをしなかった。「たぶん援兵かも知れない、そうでないにしろどうせ捕虜になるんだ、」と思って、自由に通さしたのである。時機はきわめ
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