には違いなかった。だがどうして? 下水道を通ってか。それにしては驚くべき献身的な行為である。
だれかしら。だれだろうか?
マリユスがさがしてるのはその男であった。
彼の救い主であるその男については、何にもわからず、何らの踪跡《そうせき》もなく、少しの手掛かりもなかった。
マリユスは警察の方には内々にせざるを得なかったが、それでもついに警視庁にまで探索を進めてみた。しかしそこでも他の所と同じく、何ら光明ある消息は得られなかった。警視庁では辻馬車《つじばしゃ》の御者ほどもその事件を知っていなかった。六月六日|大溝渠《だいこうきょ》の鉄の扉《とびら》の所でなされた捕縛などということは少しも知られていなかった。その件については何ら警官の報告も届いていなかった。警視庁ではそれを作り話だと見なした。それを捏造《ねつぞう》したのは御者だとされた。御者というものは、少し金をもらいたいと思えば何でもやる、想像の話でもこしらえる。とは言うものの、その事柄はいかにも確からしかった。マリユスはそれを疑い得なかった。少なくとも、上に述べたとおり、自分がその男だということは疑い得なかった。
その不思議な
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