を被っていた。父のためのもあれば、自分自身のためのもあった。
 まずテナルディエがいた。また彼マリユスをジルノルマン氏のもとへ運んでくれた未知の人がいた。
 マリユスはそのふたりの者を探し出そうとつとめた。結婚し幸福になって彼らのことを忘れようとは思わなかった。その恩を報じなければ、これから光り輝いたものとなる自分の生活に影がさしはしないかを恐れた。その負債をいつまでも遅滞さしておくことは彼にはできなかった。楽しく未来にはいってゆく前に過去の負いめを皆済ましたいと願った。
 たといテナルディエは悪漢であろうとも、そのためにポンメルシー大佐を救ったという事実を少しも曇らせはしなかった。テナルディエは世の中のだれにとっても一個の盗賊だったが、マリユスにとってだけはそうでなかった。
 そしてマリユスは、ワーテルローの戦場の実景についてはまったく無知だったので、父はテナルディエに対して、生命の恩にはなってるが感謝の義務はないという妙な地位に立ってる特別の事情を、少しも知らなかった。
 マリユスは種々の人に頼んだが、だれもテナルディエの行方《ゆくえ》をさがしあてることはできなかった。その踪跡《そ
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