ならないでくれ、頼むから。」
コゼットとマリユスとは、にわかに墳墓から楽園に移ったがようだった。その変化はあまりに意外だったので、ふたりはたとい目が眩《くら》みはしなかったとするもまったく惘然《ぼうぜん》としてしまった。
「どうしてだかお前にわかる?」とマリユスはコゼットに言った。
「いいえ。」とコゼットは答えた。「ただ神様が私たちを見てて下さるような気がするの。」
ジャン・ヴァルジャンはすべてのことをなし、すべてを平らにし、すべてを和らげ、すべてを容易ならしめた。彼はコゼット自身と同じくらい熱心に、また表面上いかにもうれしそうに、彼女の幸福を早めようとした。
彼は市長をしていたことがあるので、コゼットの戸籍という彼ひとりが秘密を握ってる困難な問題をも、よく解決することができた。その身元を露骨に打ち明けたら、あるいは結婚が破れるかも知れなかった。彼はあらゆる困難をコゼットに免れさした。彼女のために死に絶えた一家をこしらえてやった。それはいかなる故障をも招かない安全な方法だった。コゼットは死に絶えた一家のただひとりの末裔《まつえい》となり、彼の娘ではなくて、もひとりのフォーシュルヴ
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