うがいい。ただ、」と彼は急に沈み込んで言い添えた、「一つ悲しいことがある。それがわしの気がかりだ。わしの財産の半分以上は終身年金になっている。わしが生きてる間はいいが、わしが死んだら、もう二十年もしたら、かわいそうだが、お前たちは一文なしになる。男爵夫人たるこのまっ白な美しい手も、食うために働かなくてはならないことになるだろう。」
 その時、荘重な落ち着いた声が聞こえた。
「ウューフラジー・フォーシュルヴァン嬢は、六十万フランの金を持っています。」
 その声はジャン・ヴァルジャンから出たのだった。
 彼はその時まで一言も口をきかずにいた。だれも彼がそこにいることさえ知らないがようだった。そして彼は幸福な人々のうしろにじっと立っていた。
「ウューフラジー嬢というのは何のことだろう?」と祖父はびっくりして尋ねた。
「私です。」とコゼットは答えた。
「六十万フラン!」とジルノルマン氏は言った。
「たぶん一万四、五千フランはそれに足りないかも知れませんが。」とジャン・ヴァルジャンは言った。
 そして彼はジルノルマン嬢が書物だと思っていた包みをテーブルの上に置いた。
 ジャン・ヴァルジャンは自ら
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