くしないのは、彼にとっては一つの貴族的な癖だった。
「トランシュルヴァンさん、わたしは、孫のマリユス・ポンメルシー男爵のために御令嬢に結婚を申し込みますのを、光栄と存じます。」
「トランシュルヴァン氏」は頭を下げた。
「これできまった。」と祖父は言った。
 そしてマリユスとコゼットとの方を向き、祝福するように両腕をひろげて叫んだ。
「互いに愛し合うことを許す。」
 彼らは二度とその言葉を繰り返させなかった。言われるが早いかすぐに楽しく話し出した。マリユスは長椅子《ながいす》の上に肱《ひじ》をついて身を起こし、コゼットはそのそばに立って、互いに声低く語り合った。コゼットはささやいた。「ああうれしいこと、またお目にかかれたのね。ねえ、あなた、あなた! 戦争においでなすったのね。なぜなの。恐ろしいことだわ。四月《よつき》の間私は生きてる気はしなかったわ。戦争に行くなんて、ほんに意地悪ね。私あなたに何をして? でも許して上げてよ。これからもうそんなことをしてはいけないわ。さっき、私たちに来るようにって使いがきた時、私はまたもう死ぬのかと思ったの。でもうれしいことだったのね。私は悲しくて悲しくて
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