どうか結婚してくれ。かわいいお前のことだもの、幸福になってくれ。」
 そう言って、老人は涙にむせんだ。
 彼はマリユスの頭を取り、それを年老いた胸に両腕で抱きしめた。そしてふたりとも泣き出した。泣くのは最上の幸福の一つの形である。
「お父さん!」とマリユスが叫んだ。
「ああ、ではわしを愛してくれるか?」と老人は言った。
 それは名状し難い瞬間だった。ふたりは息をつまらして、口をきくこともできなかった。やがて老人はつぶやいた。
「さあ、これで口もあけた。わしをお父さんと言ってくれた。」
 マリユスは祖父の腕から頭をはずして、静かに言った。
「ですがお父さん、もう私は丈夫になっていますから、彼女に会ってもよさそうに思います。」
「それも承知してる。明日《あす》会わしてやろう。」
「お父さん!」
「何かね。」
「なぜ今日はいけないんです。」
「では今日、そう今日にしよう。お前は三度お父さんと言ったね、それに免じて許してやろう。わしが引き受ける。お前のそばへ連れてこさせよう。こうなるだろうと思っていた。ちゃんと詩にもなってる。アンドレ・シェニエの病める若者[#「病める若者」に傍点]という悲歌の
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