ょう》な手に子供の小さな手を引いて日曜日の散歩を楽しみとしてる父親があるならば、右の子供はすなわち自分の子供にほかならないと想像してもらいたい。僕はそのあわれな子供のことをよく覚えている、今も目に見るような気がする。裸のまま解剖台の上に横たわっていた時、その肋骨《ろっこつ》[#ルビの「ろっこつ」は底本では「ろうこつ」]は墓場の草の下の土饅頭《どまんじゅう》のように皮膚の下に飛び出していた。胃袋の中には泥《どろ》のようなものが見いだされた。歯の間には灰がついていた。さあ胸のうちに目を向けて、心の声に耳を傾けようではないか。統計の示すところによると、親のない子供の死亡率は五十五パーセントにおよんでいる。僕は繰り返して言う、問題は妻の上に、母親の上に、若い娘の上に、頑是《がんぜ》ない子供の上にある。諸君自身のことを言うのではない。諸君自身のことはよくわかっている。諸君が皆勇敢であることはよくわかっている。諸君が皆心のうちに、大義のために身を犠牲にするの喜びと光栄とを持ってることは、よくわかっている。諸君は有益なまたみごとな死を遂げんがために選まれたる者であることを感じており、各人皆勝利の分前
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