いた。ある時ファルネーゼのヘラクレス像の前で、大勢の者が彼を取り巻いて嘆賞したことを、わしは覚えている。それほどこの子は美しかった。まるで絵に書いたようだった。わしは時々大きい声をすることもあり、杖《つえ》を振り上げておどかすこともあったが、それもただ戯れであることを彼はよく知っていた。朝わしの室《へや》へはいってくると小言《こごと》を言ったが、それでもわしにとっては日の光がさしてくるようなものだった。そういう子供に対しては、だれでも無力なものだ。子供はわれわれを奪い、われわれをとらえて、決して放さないものだ。実際この子のようにかわいいものは世になかった。そして今、この子を殺してしまったラファイエット派やバンジャマン・コンスタン派やティルキュイル・ド・コルセル派などは、何という奴《やつ》どもだ! このままで済ますことはできない。」
やはり身動きもせずに色を失ってるマリユスに彼は近寄って、また両腕をねじ合わした。医者もマリユスのそばに戻っていた。老人の白い脣《くちびる》は、ほとんど機械的に動いて、臨終の息のように、ようやく聞き取れるかすかな言葉をもらした。「ああ、薄情者、革命党、無法者
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