。その声はほとんど激昂《げっこう》に近い震えを帯びていた。「共和は無用な者まで犠牲にするほど豊富な人数を有しない。虚栄は浪費である。ある者にとっては立ち去ることが義務であるならば、その義務もまた他の義務と同様に果たすべきではないか。」
 主義の人なるアンジョーラは、絶対のものから来るような偉力を同志の上に有していた。しかしその絶対的権力にもかかわらず、人々はなお不平をもらした。
 徹頭徹尾首領たるアンジョーラは、人々がつぶやくのを見て、なお主張した。彼は昂然として言った。
「ただ三十人になることを恐れる者はそう言え。」
 不満のつぶやきはますます高まった。
「それに、」とある群れの中から声がした、「立ち去ると口で言うのは容易だが、防寨《ぼうさい》は包囲されてるんだ。」
「市場町の方は開いている。」とアンジョーラは言った。
「モンデトゥール街は自由だ、そしてプレーシュール街からインノサン市場へ出られる。」
「そしてそこで捕《つかま》る。」と群れの中から他の声がした。「戦列兵か郊外兵かの前哨《ぜんしょう》に行き当たる。労働服をつけ縁無し帽をかぶって通ればすぐ向こうの目につく。どこからきたか
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