しい場所に近づいたことが、推定されるだけだった。人家や街路の少ない所には、下水道の風窓も少なくなる。今やジャン・ヴァルジャンのまわりには暗やみが濃くなっていた。それでも彼は闇《やみ》の中を手探りでなお前進し続けた。
するとにわかに、その闇《やみ》は恐ろしいほどになってきた。
五 砂にも巧みなる不誠実あり
ジャン・ヴァルジャンは水の中にはいってゆくのを感じ、また足の下にはもう舗石《しきいし》がなくて泥土《でいど》ばかりなのを感じた。
ブルターニュやスコットランドのある海岸では、旅客や漁夫などが、干潮の時岸から遠い砂浜を歩いていると、数分前から歩行が困難になってるのを突然気づくことが往々ある。足下の砂浜は瀝青《チャン》のようで、足の裏はすいついてしまう。それはもう砂ではなくて黐《もち》である。砂面はまったくかわいているが、歩を運ぶごとに、足をあげるとすぐに、その足跡には水がいっぱいになる。けれど目に見た所では普通の砂浜と何の違いもない。広い浜は平たく静かであり、砂は一面に同じありさまをし、固い所とそうでない所との区別は少しもつかない。跳虫《はねむし》の小さな雲のような楽
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