され頬《ほお》を打たれた。侮辱がより大なるがゆえに、人は神を感ずるのだ。」
積み重ねた舗石《しきいし》の上からそれらの会談者らを見おろしながら、ボシュエはカラビン銃を手にしたまま叫び出した。
「おお、シダテネオム、ミリノス、プロバリンテよ、エアンチデの三女神よ! ああたれかわれをして、ラウリオムやエダプテオンのギリシャ人のごとくに、ホメロスの詩を誦《ず》せしむる者があるか!」
三 光明と陰影
アンジョーラは偵察《ていさつ》に出かけていた。彼は軒下に沿ってモンデトゥール小路から出て行った。
ちょっとことわっておくが、暴徒らは皆希望に満ちていた。たやすく前夜の襲撃を撃退したので、夜明けの襲撃をも前もってほとんど軽蔑するような気になっていた。彼らはその襲撃を微笑しながら待ち受けていた。彼らはおのれの主旨を確信するとともに、成功をもはや疑わなかった。その上援兵もきつつあるに違いないと思っていた。彼らはそれをあてにしていた。光明的な楽観をもって前途を速断するのは、フランス戦士の力の一つである。彼らはきたらんとする一日を三つの局面に分かって、それを確信していた。すなわち、朝六時
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