あろう?
上衣によくボタンをかけてる男は、汀の先端まで進んでゆき、拳《こぶし》を握りしめ目を見張り考え込んで、しばらくたたずんだ。と突然彼は額をたたいた。地面がつきて水となってる所に、分厚《ぶあつ》な錠前と三つの太い肱金《すじかね》とのついてる大きな低い円形の鉄格子《てつごうし》を、彼は認めたのだった。その鉄格子は、川岸通りの下に開いてる一種の門であって、その口は川と汀《みぎわ》とにまたがっていた。黒ずんだ水が下から流れ出ていた。水はセーヌ川に注いでいた。
その錆《さび》ついた重い鉄棒の向こうに、一種の丸い廊下が見えていた。
男は両腕を組んで、叱責《しっせき》するような様子で鉄格子を睨《にら》めた。
しかし睨んだだけでは足りないので、彼はそれを押し開こうとした。そして揺すってみたが、鉄格子はびくともしなかった。何の音も聞こえなかったけれども、たぶんそれは今しがた開かれたはずである。そんな錆ついた鉄格子にしては、音のしなかったのが不思議である。またそれは再び閉ざされたに相違ない。してみれば、つい先刻その門を開いて閉ざした男は、開門鉤《かいもんかぎ》ではなく一つの鍵《かぎ》を持って
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