げた、というのも実際のありさまを示す言葉である。そして彼はマリユスを肩にかつぎ、前方に歩き出した。彼は決然として暗黒の中にはいって行った。
しかし実際においてふたりは、ジャン・ヴァルジャンが思っていたほど安全になったのではなかった。種類は違うがやはり同じく大なる危険が、彼らを待ち受けていた。戦闘の激しい旋風の後に毒気と陥穽《かんせい》との洞窟《どうくつ》がきたのである。混戦の後に汚水溝渠《おすいこうきょ》がきたのである。ジャン・ヴァルジャンは地獄の一つの世界から他の世界へ陥ったのである。
五十歩ばかり進んだ時、彼は立ち止まらなければならなかった。問題が一つ起こった。隧道《すいどう》は斜めにも一つの隧道に続いていた。二つの道が開いていた。いずれの道を取るべきか、左へ曲がるべきか右へ曲がるべきか。その暗い迷宮の中でどうして方向を定められよう。しかし前に注意しておいたとおり、その迷宮には一つの手がかりがある。すなわちその傾斜である。傾斜に従っておりてゆけば川に出られる。
ジャン・ヴァルジャンは即座にそれを了解した。
彼は考えた。たぶんここは市場町の下水道に違いない。それで、道を左に取
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