ある。驚嘆すべき天の待ち伏せである。
 ただ負傷者は少しの身動きもしなかった。ジャン・ヴァルジャンはその墓穴の中で今自分の担《にな》ってる男が、果たして生きてるのか死んでるのかを知らなかった。
 彼の第一の感じは、盲目になったということだった。にわかに彼は何にも見えなくなった。それからまた、しばらくの間は聾者《ろうしゃ》になったような気もした。何も聞こえなかった。頭の上数尺の所で荒れ狂ってる虐殺の暴風は、前に言ったとおり厚い地面でへだてられたので、ごくかすかにぼんやり響いてくるだけで、ある深い所にとどろいてる音のように思われた。彼は足の下が堅いことを感じた。それだけであった。しかしそれで十分だった。一方の手を伸ばし、次にまた他方の手を伸ばすと、両方とも壁に触れた。そして道の狭いことがわかった。足がすべった。そして舗石《しきいし》のぬれてることがわかった。穴や水たまりや淵《ふち》を気使って、用心しながら一歩ふみ出してみた。そして石畳が先まで続いてるのを悟った。悪臭が襲ってきたので、それがどういう場所であるかを知った。
 しばらくすると、彼はもう盲目ではなかった。わずかな光が今すべり込んで
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