に余りあるほど数多ある。卓越して理想を味わってる国民も、次に泥を噛《か》んでそれを甘しとする。そしてソクラテスを捨ててフォルスタフを取る理由を尋ねらるる時、彼は答える、為政家を好むからであると。
 白兵戦の物語に戻る前、なお一言しておきたい。
 今われわれが物語ってるような戦いは、理想を求むる一つの痙攣《けいれん》にほかならない。束縛されたる進歩は病いを得て、かかる悲壮な癲癇《てんかん》の発作をなす。この進歩の病いに、内乱に、吾人は途中で出会わざるを得なかったのである。社会的永罰を受けたる人物を軸とし進歩[#「進歩」に傍点]を真の表題とするこの劇においては、それは幕中にまた幕間に必ずいできたるべき一局面である。
 進歩[#「進歩」に傍点]!
 吾人がしばしば発するこの叫びこそ、吾人の考えのすべてである。一編の劇がここまできた以上は、中に含まってる観念はなお多くの試練を受くべきものであるとしても、今吾人は、よしやその帷《とばり》をまったく掲げることは許されないまでも、少なくともその光を明らかに透かし見せることだけはおそらく許されるであろう。
 読者が今眼前にひらいている書物は、中断や例外
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