、一歩も枉《ま》ぐることのできない各人の自己に対する主権、正義、真理、などである。そして場合によっては、三百人のスパルタ人([#ここから割り注]訳者注 テルモピレにおいてレオダニスに率いられし兵士[#ここで割り注終わり])のごとくに死するであろう。頭に浮かべるのは、ドン・キホーテのことではなくレオニダスのことである。そして彼らは前方に進んでゆく。一度踏み出せばもはや退くことをしない。頭をかがめてまっしぐらに突進する。希望として心にいだくところのものは、前代未聞の勝利、完成されたる革命、自由の手に託されたる進歩、人類の成長、世界の救済などである。またいかに失敗しようとも、結局テルモピレに過ぎない。
進歩のためのかかる戦いは、しばしば失敗するものであって、その理由は上に述べきたったとおりである。群集は冒険騎士の誘導に従わない。重々しい集団は、多衆は、自身の重さのためにかえってこわれやすいものであって、冒険を恐れる。理想のうちには多少の冒険がある。
その上、忘れてならないことには、利害の念もそこに交じってくる。利害の念は理想と情操とに親しみ難い。時としては、胃袋は心を麻痺《まひ》させる。
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