。マリー・ド・メディチの愛した古い小鳥も、高い樹木の中で恋を語っていた。チューリップの花は日の光を受けて、金色に紅色にまたは燃ゆるがようになり、あたかも花で作られた種々の炎に異ならなかった。その群咲《むれざ》きのまわりには蜂《はち》が飛び回って、炎の花から出る火花となっていた。すべては優美と快活とにあふれ、次にきたるべき雨さえもそうだった。再び来るその雨も、鈴蘭《すずらん》や忍冬《すいかずら》が恵みをたれるのみで、少しも心配なものではなかった。燕《つばめ》は見るも不安なほどみごとに低く飛んでいた。そこにある者は幸福の気を呼吸し、生命はよきかおりを発し、自然はすべて純潔と救助と保護と親愛と愛撫《あいぶ》と曙《あけぼの》とを発散していた。天より落ちて来る思想は、人が脣《くち》づけする小児の小さい手のようにやさしいものであった。
 木の下に立ってる裸体のまっ白な像は、点々と光の落ちた影の衣服をまとっていた。それらの女神は日光のぼろをまとっていたのである。光線はその四方へたれ下がっていた。大きな池のまわりは、焼けるかと思えるまでに地面がかわききっていた。わずかに風があって、所々に塵《ちり》の渦
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