えんと欲したかのように、その轅《ながえ》をいたずらにある空中の馬に差し出してるかと思われた。その巨大な堆積、暴動の積層は、あらゆる革命がオッサ山とペリオン山とを積み重ねたものかと([#ここから割り注]訳者注 ジュピテルに反抗した巨人らが天に攻め上らんために重ねたテッサリーの二つの山[#ここで割り注終わり])見る者の心に思わせた。八九年([#ここから割り注]一七―[#ここで割り注終わり])の上に積み重ねた九三年([#ここから割り注]一七―[#ここで割り注終わり])、八月十日([#ここから割り注]一七九二年[#ここで割り注終わり])の上に積み重ねた共和熱月九日([#ここから割り注]一七九四年七月二十七日[#ここで割り注終わり])、一月二十一日([#ここから割り注]一七九三年[#ここで割り注終わり])の上に積み重ねた共和霧月十八日([#ここから割り注]一七九九年十一月九日[#ここで割り注終わり])、共和草月([#ここから割り注]一七九五年五月[#ここで割り注終わり])の上に積み重ねた共和檣月([#ここから割り注]一七九五年十月[#ここで割り注終わり])、一八三〇年の上に積み重ねた一八四八年であった。場所の要害はその努力にふさわしいものであり、防寨《ぼうさい》はバスティーユの牢獄の消えうせた場所に出現して恥ずかしくないものであった。もし大洋が堤防を築くとするならば、おそらくかかる防寨《ぼうさい》を築くであろう。狂猛な怒濤《どとう》の跡はその畸形《きけい》な堆積の上に印せられていた。しかもその怒濤は、下層の群集だったのである。その喧囂《けんごう》の状の化石が見えるかと思われた。急激な進歩の暗い大きな蜂《はち》の群れがおのれの巣の中で騒いでるのが、この防寨の上に聞こえるかと思われた。それは一つの藪《やぶ》であったか、酒神の祭であったか、それとも一つの要塞《ようさい》であったろうか。眩惑《げんわく》の羽ばたきによって作られたものかと思われた。その角面堡《かくめんほう》のうちには一種の塵芥《ごみ》の山があり、その堆積のうちには一種のオリンポスの殿堂があった。その絶望に満ちた混乱のうちに見らるるものは、屋根の椽木《たるき》、色紙のはられた屋根部屋の断片、砲弾を待ち受けて物の破片のうちに立てられてるガラスのついた窓の扉《とびら》、引きぬかれた煙筒《えんとつ》、戸棚《とだな》、テーブル、
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