ってゆくとか、すべてそういう何でもなさそうな特殊の癖、表面に現われたる波紋や泡やとらえ難い皺《しわ》は、しばしば恐るべき底から発してくることがある。
かくて数週間過ぎ去っていった。新しい生活はしだいにコゼットをとらえていった。結婚のために生じた交際、訪問、家政、遊楽、それらの大事件が起こってきた。コゼットの楽しみは費用のかかるものではなかった。それはただマリユスといっしょにいるということだけだった。彼と共に出かけ、彼と共に家にいる、それが彼女の一番大事な仕事だった。互いに腕を組み合わし、白昼街路を公然と、人通りの多い中をただふたりで歩くこと、これは彼らにとって常に新しい喜びだった。コゼットが気を痛めたことはただ一つきりなかった。すなわち、年取ったふたりの独身女は融和し難いけれど、祖父は達者であり、マリユスは時々何かの弁論に出廷し、ジルノルマン伯母《おば》は新家庭のそばに差し控えた日々を送りつつ満足していた。ジャン・ヴァルジャンも毎日訪れてきた。
お前という呼び方は消えうせてしまい、あなたとか奥さんとかジャンさんとかいうことになって、彼はコゼットに対してまったく別人のようになった。彼女の心を自分から離そうとした彼の注意は、うまく成功した。彼女はますます快活になり、ますますやさしみが減じてきた。それでもなお彼女はよく彼を愛してい、彼もそのことを感じていた。ある日彼女は突然彼に向かって言った。「あなたは私のお父様でしたが、今はそうでなくなり、あなたは私の伯父様《おじさま》でしたが、今はそうでなくなり、あなたはフォーシュルヴァン様でしたが、今はジャン様となられたのですね。するとあなたは、いったいどういう方なんでしょう。私そんなこといやですわ。もしあなたがごくいい方だということを知らなかったら、私はあなたをこわがるかも知れません。」
彼はなおオンム・アルメ街に住んでいた。以前コゼットが住んでいた街区を去るに忍びなかったのである。
初めのうち彼は、数分間しかコゼットのそばにいないで、すぐ帰っていった。
ところがしだいに、彼は長居をするようになってきた。あたかも日が長くなるのに乗じた形だった。彼は早くきては遅く帰っていった。
ある日、コゼットはふと「お父様」と言ってしまった。すると喜びのひらめきが、ジャン・ヴァルジャンの陰鬱《いんうつ》な老年の顔に輝いた。彼は彼女をと
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