の方はジャヴェルの手で「あげられた。」しかしそれはジャヴェルのつまらない腹癒《はらい》せだった。エポニーヌはアゼルマといっしょにマドロンネット拘禁所に入れられた。
終わりに、ゴルボー屋敷からフォルス監獄へ行く途中で、主要な捕虜のひとりたるクラクズーが姿を消した。どうして逃げたか少しもわからなかった。彼は煙にでもなったのか、指錠の中にでもはいり込んだのか、馬車の割れ目にでも流れ込んだのか、馬車が裂けでもしてそこから逃げ出したのか、刑事や巡査らにも「まったく訳がわからなかった。」ただわかったことは、監獄につくともうクラクズーはいないということだった。それには妖精《ようせい》か警官かが手を貸したに違いなかった。クラクズーは一片の雪が水の中にとけ込むように闇《やみ》の中にとけ込んでしまったのであろうか。警官らの方でひそかにかくまったのであろうか。彼は無秩序と秩序との両方にまたがる怪しい男だったのであろうか。彼は犯罪と取り締まりと両方に属する男だったのであろうか。この謎《なぞ》の男は前足を罪悪のうちにつっ込み、後足を官憲のうちにつっ込んでいたのであろうか。ジャヴェルはそういう二またの考えを認め
前へ
次へ
全722ページ中96ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング