りつぶされたまでである。
 ブールボン家の没落は、彼らの方ではなく国民の方において、壮観をきわめた。彼らは粛然としかし何らの権威もなく王位を去った。彼らの滅落は、史上に陰惨なる感動を残す壮大な消滅の一つではなかった。シャール一世の幽鬼のごとき静穏でもなく、ナポレオンの鷲《わし》の叫びでもなかった。ブールボン家はただ立ち去った、それだけのことである。彼らは王冠をそこに置いた、そして自ら円光を保有しもしなかった。彼らはりっぱであった、しかしおごそかではなかった。彼らにはある程度まで不幸の壮大さが欠けていた。シャール十世はシェルブールへの旅行中、丸いテーブルを四角に切らした、そして崩壊しかけた王政よりも乱れかけた儀礼の方にいっそう心を痛めてるらしかった。かかる低落は、ブールボン家の者を愛する忠誠な人々を悲しましめ、その家がらをとうとぶまじめな人々を悲しました。しかるに民衆の方はいかにもみごとであった。ある朝、武装した王党の暴動とも言うべきものに国民は襲われた、しかし国民は自ら力あることを感じて、別に憤りもしなかった。国民はそれを防ぎ、自らおさえて、事物をその本来の場所に、すなわち政府を法律の
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