アンジョーラに近寄って耳にささやいた。
「安心したまえ。」
彼は決然と帽子を目深に引き下げて、出かけて行った。
十五分ほど後には、ミューザン珈琲店の奥室にはもうだれもいなかった。ABCの友はすべて、各自の方面へ自分の仕事をしに出かけて行った。クーグールド結社の方を自ら受け持ったアンジョーラが最後に出て行った。
パリーにいるエークスのクーグールド派の者らは当時、イッシーの野原の、そこいらにたくさんある廃《すた》れたる石坑の一つの中で集合を催していた。
アンジョーラはその集合所の方へ歩を運びながら、心のうちで情況を一々考えてみた。事局の重大さは明らかに見えていた。社会のうちに潜伏している一種の病気の前駆症状たる事実が、重々しく動いてる時には、わずかな併発症でもそれを停止さして紛糾させることがある。崩壊と再生とが生じてくる現象である。アンジョーラは未来の暗黒な襞《ひだ》の下に光明が立ち上りかけてるのを瞥見《べっけん》した。おそらくは時期が到来せんとしているのであろう。再び権利を握って立つ民衆、何という美観であろう。革命は再び堂々と全フランスを提げて立ち、世界に向かって「明日を見よ!」
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