A」とガヴローシュは言った、「俺《おれ》は君に向かって失礼な呼び方はしなかったぜ。なぜそんな無礼なことを言うんだい。」
「どこへ行くのか。」
「君、」とガヴローシュはまた言った、「君はたしか昨日まではおもしろい男だったが、今朝になって免職されたんだな。」
「どこへ行くのかって聞いてるんだ、ばか。」
ガヴローシュは答えた。
「君はおとなしい物の言い方をするね、どう見ても君は年齢《とし》より若いぜ。その髪の毛を売るといいね、一つかみ百フランはする。すっかりで五百フランにはなるぜ。」
「どこへ行くのか、どこへ行くのか、どこへ行くのかというに、泥坊め。」
ガヴローシュは言った。
「きたねえ言葉を吐くなよ。第一その口を拭《ふ》かなくちゃ乳《おっぱい》はもらえねえぜ。」
軍曹《ぐんそう》は銃剣をさしつけた。
「さあ、これでもどこへ行くのか言わんか、畜生。」
「大将、」とガヴローシュは言った、「俺《おれ》はね、女房がお産をしかけてるから医者を呼びに行くところだよ。」
「銃を取れ!」と軍曹は声高く叫んだ。
自分を死地に陥れたところの物を利用して反対に身を脱するのが、元気な者のみごとな策略である
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