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その数語に対して、彼は激しい眩惑《げんわく》を覚えた。しばらくは、心の中に起こった感情の変化に押しつぶされたまま、驚駭《きょうがい》の念に酔ったかのようにマリユスの手紙をながめていた。彼は目の前に、憎むべき男の死という美しい光景を描き出していた。
彼は内心の喜びの恐ろしい叫びをもらした。――かくて万事終わったのである。結末は思ったよりも早く到来した。彼の運命をふさいでいる男は今や消えうせんとしていた。その男は自ら勝手におのれの意志で立ち去ったのである。彼ジャン・ヴァルジャンが少しも手出しをすることなく、少しも罪を犯すことなくして、「あの男」は死のうとしていた。おそらくはもう既に死んでるかも知れなかった。――そこで彼の熱に浮かされた心は推測を始めた。――否。彼はまだ死んではいない。手紙は明らかに、明朝コゼットに読ますように書かれている。十一時と十二時との間に聞こえた二度の一斉射撃《いっせいしゃげき》以来、何の音も聞こえなかった。防寨《ぼうさい》は夜明けにならなければ本当の攻撃は受けないだろう。しかしいずれにしても同じことである。「あの男」は、一度戦いにはいった以上
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