ニがお前にできるもんか。」とガヴローシュは叫んだ。「この手紙はシャンヴルリー街の防寨《ぼうさい》からきたんだ。俺はまたそこに帰ってゆくんだ。では失敬。」
 そう言ってガヴローシュは立ち去った、というよりむしろ、籠《かご》から出た小鳥のようにもときた方へ飛んでいった。そして弾丸のようにすみやかに、闇《やみ》の中にま一文字に飛び込んでしまった。オンム・アルメ街は再び沈黙と静寂とに返った。またたくまに、影のようなまた夢のようなその不思議な少年は、暗い人家の立ち並んでる靄《もや》の中に沈み込み、闇の中の煙のように見えなくなってしまった。それから二、三分の後、ガラスのこわれる音や街灯が火の粉を上げながら舗石《しきいし》の上に落ちる音がして、また突然市民を驚かし憤らしたけれど、もしそれがなかったならば、少年はどこかへ消散し消滅してしまったかと思われるほどだった。その物音は、ショーム街を通りながらガヴローシュのやったことだった。

     三 コゼットとトゥーサンとの眠れる間に

 ジャン・ヴァルジャンはマリユスの手紙を持って家にはいった。
 彼は餌物《えもの》をつかんでる梟《ふくろう》のように暗
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