A向こうが帽子をかぶっていないのを見て、安心の念を起こした。
「なるほど、」と彼は言った、「では街灯をこわさせないためでもねえんだな。」
「何でもこわすがいいよ。」
「お前はりっぱな男だ。」とガヴローシュは言った。
そして彼は五フラン貨幣をポケットに入れた。
彼はますます安心して言い出した。
「お前はこの街路の人かい。」
「そうだよ。なぜ?」
「七番地ってのはどこだか教えてくれないか。」
「七番地に何の用があるのかね。」
そこで少年は口をつぐんだ。あまり言いすぎはしなかったかと恐れた。彼は頭を爪《つめ》の先でがりがりかいて、ただこう答えた。
「ああここか。」
ある考えがジャン・ヴァルジャンの頭に浮かんだ。心痛にもそういう明察がある。彼は少年に言った。
「お前さんは、私が待ってる手紙を持ってきたのではないのか。」
「お前が?」とガヴローシュは言った。「お前は女じゃねえや。」
「手紙はコゼット嬢へというのではないのか。」
「コゼット?」とガヴローシュはつぶやいた。「うむ、何でもそんな名だった。」
「では、」とジャン・ヴァルジャンは言った、「私がその手紙を届ける役目だ。私にくれ。」
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