ス。ああ最後の試練は、否むしろ唯一の試練は、愛する者を失うということである。
 あわれなる老いたるジャン・ヴァルジャンは、確かにただ普通の父と同じ愛情でコゼットを愛していた。しかし前に注意しておいたとおり、その父たる愛情のうちには生涯の孤独から来るあらゆる愛情が混じていた。彼はコゼットを、娘として愛し、母として愛し、妹として愛していた。また彼はかつて情婦を持たず妻を持たなかったので、そしてまた自然はいかなる支払い拒絶をも許さない債権者のごときものであるから、あらゆる感情のうちで最も根深いあの感情もまた、彼の他の愛情のうちに交じっていた。しかしそれはただ、漠然《ばくぜん》たるものであり、無知なるものであり、盲目的に純潔なものであり、無意識的なものであり、天国的な天使的な神聖なものであって、感情というよりもむしろ本能であり、本能というよりもむしろ、感じ難い見え難いしかも現実なる一つの牽引《けんいん》の情にすぎなかった。いわゆる恋情というものは、コゼットに対する彼の広大な愛情のうちにあっては、あたかも人跡を絶した暗黒な山岳のうちにある一筋の黄金脈のごときものであった。
 上に指摘してきた心の
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