「運命はやはり同じことだ。」マリユスのような夢想家は往々極度の煩悶《はんもん》に陥るもので、そこから絶望的な決意が生じてくる。生の苦しみはたえ難いものである。死はいっそうたやすい。
 その時彼は、自分の果たすべき二つの義務が残ってることを考えた。一つは、コゼットに自分の死を知らせ、最後の別れを告げること。一つは、テナルディエの子でありエポニーヌの弟であるあのあわれな少年を、まさにきたらんとする切迫せる破滅の淵《ふち》から救うこと。
 彼は今もなお紙ばさみを身につけていた。コゼットにあてて幾多の思いを書きしるした手帳がはいっていた紙ばさみである。彼はそれから一枚の紙をぬき取り、鉛筆で次の数行をしたためた。

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私たちの結婚は不可能です。私は祖父に願ったが断わられた。私には財産もなく、あなたも同様です。私はあなたの家に駆けつけたが、あなたはもういなかった。私がなした誓いをあなたは知っているでしょう。私はそれを守るだけです。私は死ぬ。私はあなたを愛する。これをあなたが読む頃には、私の魂はあなたの傍にあって、あなたにほほえんでいるでしょう。
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