A防寨、共和のために身をささげたマブーフ氏、反徒の首領となった自分の身、すべてそれらのことは奇怪な悪夢のように思われた。今周囲の万事が現実であることを知るためには、心意の努力をしなければならなかった。マリユスは人生の経験があまりに少ないので、最も緊急なのは不可能事であるということを知らず、常に予期しなければならないのは意外事であるということを知らなかった。彼はあたかも不可解な一編の劇を見るように、自分自身の劇を見ていた。
かく彼は、頭が靄《もや》のうちに包まれていたので、ジャヴェルの顔を見分けることができなかった。ジャヴェルは柱に縛られたまま、防寨《ぼうさい》が攻撃されてる間頭一つ動かさず、殉教者のような忍従と審判者のような威厳とで、周囲にわき立ってる反乱をながめていた。マリユスは彼の存在に気づきもしなかった。
その間、襲撃者の方には動く気色《けしき》もなかった。ただ街路の先端に群がってる足音だけは聞こえていたが、進んできはしなかった。あるいは命令を待っていたのか、あるいはその不落の角面堡《かくめんほう》に再び襲いかかる前に、援兵を待っていたのであろう。暴徒の方は哨兵《しょうへい》
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