梶[街のサン・テュスターシュの方をふさいでる人家の高い屋根を、そのまっ暗な奥に浮き出さしていた。それはコラント亭の防寨《ぼうさい》の中に燃えてる炬火《たいまつ》の反映だった。マリユスはその赤い光の方へ進んでいった。そして野菜市場までゆくと、プレーシュール街の暗い入り口が見えた。彼はそこにはいって行った。向こうの端に立っていた暴徒の見張りは、彼の姿を見つけなかった。彼は今まで、さがし求めていたもののすぐそばにきたことを感じ、爪先《つまさき》で歩き出した。かくてモンデトゥール小路の短い街路の曲がり角《かど》まで達した。読者の記憶するとおり、それはアンジョーラが開いて置いた外部との唯一の交通路であった。最後の人家の角《かど》から左へ頭を出して、彼はモンデトゥール街の中をのぞき込んだ。
彼自身をも包む広い闇《やみ》を投じてるシャンヴルリー街とその小路との暗い角から少し先に、舗石《しきいし》の上のかすかな明るみと居酒屋の小部分と、その向こうには一種変な形の壁の中にちらついてる豆ランプと、銃を膝《ひざ》にのせてうずくまってる数名の男とを、彼は認めた。すべてそれらは彼から十間ばかりの所にあった。そ
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