ス多くの者があったが、そのうちに、肩のすれ切った人夫ふうな短上衣を着、盛んに身振りをし、声が太く、気の荒い酔っ払いみたいな顔つきをした、ひとりの男がいた。その男は、本名か綽名《あだな》かはわからないがル・カブュクと呼ばれていた。そしてまた、見覚えがあるようだと言ってる人たちも本当はまったく知らないのであって、ひどく酩酊《めいてい》してるのかまたはそのまねをしてるのかもわからなかった。彼は数人の者とともに、居酒屋の外に持ち出したテーブルにすわっていた。そして一座の者らに酒をすすめながら、防寨《ぼうさい》の奥にある大きな人家をながめてはしきりに考えてるらしかった。その六階建ての家は、街路をずっと見おろして、サン・ドゥニ街に正面を向けていた。すると突然彼は叫んだ。
「おい皆の者、あの家《うち》から射撃したらいいじゃねえか。あの窓に控えてりゃあ、だれも街路を進んでくることはできねえ。」
「うん、しかし家はしまってるからな。」と酒を飲んでた一人が言った。
「たたいてみようや。」
「たたいたってあけるものか。」
「では扉《とびら》をぶちこわすばかりだ。」
ル・カブュクは扉の所へ駆けて行って、そこ
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