モフ謎[#ここで割り注終わり])
 すぐに馬は解き放されて、モンデトゥール街の方へ自由に追い放された。馬車は横倒しにされて、街路をすっかりふさいでしまった。
 ユシュルー上さんは狼狽《ろうばい》のあまり二階に身を隠していた。彼女はただぼんやり目を見開いたまま何にも見ず、ただ低く泣いていた。そのおびえた泣き声は喉《のど》の外にはもれなかった。
「ああ世の中もおしまいだ。」と彼女はつぶやいた。
 ジョリーは上《かみ》さんのしわよった赤い太い首に脣《くち》づけをしてやって、それからグランテールに言った。
「おい君《きび》、僕はいつも女の首ってぼのはこの上《ぶえ》もなく美妙なぼのと考えるね。」
 しかしグランテールは無上の酔いきげんに達していた。マトロートが二階に上がってくると、彼女の腰をとらえて、盛んな笑い声を窓から外に送った。
「マトロートは醜い。」と彼は叫んだ。「マトロートは醜悪の夢だ。マトロートは一つの幻だ。この女の出生の秘密はこうだ。大会堂の水口を作っていたあるゴチックのピグマリオンが、([#ここから割り注]訳者注 ピグマリオンは古代の彫刻家で、おのれの手に成ったガラテアの像に恋いし
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