i[#ここから割り注]訳者注 鼻がつまっているためにマリユスのことをこう発音したのである[#ここで割り注終わり])は夢中になってるというじゃないか。」
「相手はだれだかわかってるか。」とレーグルは尋ねた。
「ばからん。」
「わからない?」
「ばからんというんだ。」
「マリユスの色事か!」とグランテールは叫んだ。「僕にはここにいてちゃんとわかってる。あいつは霧だから、霞《かすみ》のような女を見つけたに違いない。マリユスは詩人の仲間だ。詩人と言えば狂人だ。アポロンは狂人なりだ[#「アポロンは狂人なりだ」に傍点]。マリユスと、その相手のマリーかマリアかマリエットかマリオンか、とにかくふたりはおかしな一対に違いない。どんな具合か僕にはよくわかる、接吻《せっぷん》を忘れた有頂天だ。無限のうちで抱擁する地上の貞節だ。官能を有する魂だ。彼らは星の中でいっしょに寝ているんだ。」
グランテールは二本目の壜に手をつけた。そしてたぶん二回目の冗弁に取りかかろうとしたが、その時新たな顔が階段の所の四角な穴から現われた。十歳にも満たない子供で、ぼろをまとい、ごく背が低く、色が黄色く、動物面をし、目が鋭く、髪の
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