ヘ一定の望みどおりの方へばかり行くものではない。前に説明したとおり、風のまにまに吹きやられるものである。彼らはサン・メーリーを通り越し、どうしてだか漠然《ばくぜん》とサン・ドゥニ街まできてしまった。
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   第十二編 コラント


     一 コラント亭の歴史

 今日、市場《いちば》の方からランブュトー街へはいってゆくと、右手に、モンデトゥール街と向き合った所に、一軒の籠屋《かごや》がある。その看板は、ナポレオン大帝の形をした籠で、「ナポレオンは柳の枝にて作らる[#「ナポレオンは柳の枝にて作らる」に傍点]」としるされている。そしてそれを見るパリー人も、わずか三十年前に恐ろしい光景がそこで演ぜられたとは、夢にも思わないであろう。([#ここから割り注]訳者注 本書の出版は一八六二年なることを記憶していただきたい[#ここで割り注終わり])
 こここそ、以前シャンヴルリー街といった所で、昔の書き方ではシャンヴェールリー街といい、コラントという有名な居酒屋のあった所である。
 サン・メーリーの防寨《ぼうさい》の影に隠れてはいるが、この場所に設けられてた防寨の名が前にちょっと出
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