[マ王([#ここから割り注]ナポレオン二世[#ここで割り注終わり])の小さな馬車を引いてた時のことだよ。お前さんはローマ王を覚えてるかい。」
「私はボルドー公が好きだったよ。」
「私はルイ十七世を知っていた。ルイ十七世の方がいいよ。」
「肉がほんとに高いじゃないか、パタゴンさん。」
「ああ、もうそんなことは言いっこなし、私は肉屋が大きらい。身震いが出るよ。この節じゃ骨付きしかくれやしない。」
その時屑拾いの女が口を出した。
「皆さん、商売の方も不景気ですよ。芥溜《ごみため》だってお話になりません。物を捨てる人なんかもうひとりもいません。何でも食べてしまうんですね。」
「でもヴァルグーレームさん、お前さんよりもっと貧乏な人だってあるよ。」
「そう言えばまあそうですね。」と屑屋《くずや》はつつましく答えた。「私にはこれでもきまった仕事がありますからね。」
ちょっと話がとぎれた。屑拾いの女は、だれにもあるように少し吹聴《ふいちょう》したくなって、言い添えた。
「朝家に帰って、私は籠《かご》の物を調べ、一々|選《え》り分けるんですよ。室《へや》いっぱいになります。ぼろ屑は笊《ざる》に入れ、
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