ミとりの少年があった。身にはぼろをまとい、ベルヴィルの丘で折り取った一枝の金雀花《えにしだ》を手にしていたが、ある古物商の店先に騎馬用の古いピストルが一つあるのに目を止めた。彼は舗石《しきいし》の上に花の枝を投げすてて、そして叫んだ。
「おい小母《おば》さん、道具を借りるよ。」
 そして彼はピストルを持って行ってしまった。
 それから間もなく、アムロー街やバス街から逃げ出してる狼狽《ろうばい》した市民の一群は、ピストルを振り回してるひとりの少年に出会った。少年は歌っていた。

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夜分は見えず、
昼間は見える。
偽《にせ》証文で、
市民は狼狽。
徳を行なえ、
とんがり帽子。
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 それは戦《いくさ》に赴《おもむ》いてる少年ガヴローシュであった。
 大通りで彼は、ピストルに撃鉄がついていないことに気づいた。
 彼が歩調を取るのに用いてる右の一連の歌や、また時に応じて彼がよく歌う種々な歌は、いったいだれが作ったのであるか? われわれはそれを知らない。
 おそらく彼が自分で作ったのかも知れない。元来ガヴローシュはあらゆる流行歌に通じていて、それに自
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