アこから割り注]訳者注 フランス国民の一標章[#ここで割り注終わり])がある民衆の旗から裂き取られて泥の下に踏みにじられた。サン・マルタン市門で一人の巡査が剣で突かれた。軽騎兵第十二大隊の一将校は「僕は共和党だ」と声高に言った。理工科学校の生徒らが禁足の令を破って突然現われた。「理工科学校万歳! 共和万歳!」の叫びがいっせいに起こった。かくてバスティーユまでくると、恐るべき野次馬の長い列が、サン・タントアーヌの郭外から現われてきて行列に加わった。群集はある恐ろしい沸騰をきたし始めた。
ひとりの男が傍《かたわら》の男にこう言ってるのが聞かれた。「あすこに赤髯《あかひげ》の男がいるだろう。いよいよやっつける時にはあの男が合い図をするんだぜ。」その赤髯の男は、後にケニセー事件の暴動の時にも現われて、同じ役目を帯びていたらしい。
棺車はバスティーユを過ぎ、掘り割りに沿い、小さな橋を渡り、オーステルリッツ橋の前の広場に達し、そこで止まった。その時群集を上から見おろしたら、彗星《すいせい》のような形になっていたに違いない。その頭は橋の広場にあり、その尾はブールドン河岸の上にひろがって、バスティ
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