ト静まるものではない。一つの革命は一挙にして断ち切らるるものではない。平和の状態に戻る前には必然に多少の波瀾《はらん》が常にあるもので、あたかも山岳から平野におりてゆくようなものである。アルプスの山脈には常にジュラの小脈がついており、ピレネー山脈には常にアステュリーの小脈がついている。
 パリー人の脳裏で暴動の時期[#「暴動の時期」に傍点]と称するところの、現代史中のこの壮烈なる危機は、十九世紀の幾多の騒擾《そうじょう》の時期のうちにおいても、たしかに独特の性質を有する一時期である。
 物語にはいる前になお一言つけ加えたい。
 次に語ろうとする事柄は、劇的な生きたる現実に属するものであるが、時間と場所とが不足なので往々歴史家から等閑に付せられている。けれどもそこには、吾人は主張したい、そこには、人間の生命のあえぎと戦慄《せんりつ》とがある。前に一度述べたと思うが、小さな個々の事柄は、言わば大なる事変の枝葉のごときものであって、歴史の遠方に見えなくなっている。いわゆる暴動の時期[#「暴動の時期」に傍点]には、この種の些事《さじ》が無数にある。裁判上の調査も、歴史とはまた異なった理由から、
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