「。彼もまた、現実の世界に向かって理想の世界の名による抗議を浴びせかけ、幻覚をもって巨大なる風刺となし、一種のローマたるニニヴェやバビロンやソドムなどの上に、黙示録[#「黙示録」に傍点]の燃え立つ光を投げかけている。
 厳《いわお》の上のヨハネは、断崖《だんがい》の上のスフィンクスである。われわれはその言葉を解くことを得ない。それはユダヤの人であり、ヘブライの言葉である。しかしローマ年代記[#「ローマ年代記」に傍点]を書いた者は、ひとりのラテン人であり、なお詳しく言えばひとりのローマ人である。
 ネロのごとき皇帝らが暗黒なる政治を行なう時、彼らはあるがままに描写せられなければならない。筋を刻むだけでは影薄いであろう。その刀痕《とうこん》のうちには痛烈なる散文の精髄を交じえなければならない。
 専制君主らも思想家にとっては何かの役に立つ。鎖につながれたる言葉こそは恐るべき言葉である。君主が民衆に沈黙をしいる時、筆を執る者はその文体を二重にも三重にも変える。かかる沈黙からはある神秘な充実さが生まれてき、やがては思想のうちによどみ凝集して青銅の鐘となる。歴史の圧縮は歴史家の文章に簡潔さを与え
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