゚た。それから踏み段の上にすわり、心は情愛と決意とに満ち、胸の奥で自分の愛を祝福し、コゼットが出発してしまった今となってはもはや死ぬのほかはないと自ら言った。
 突然彼は人の声を聞いた。それは街路から来るもののようで、木立ち越しに叫んでいた。
「マリユスさん!」
 彼は身を起こした。
「ええ?」と彼は言った。
「マリユスさん、あなたそこにいるの?」
「ええ。」
「マリユスさん、」とその声はまた言った、「お友だちがみなあなたを、シャンヴルリー街の防寨《ぼうさい》で待っています。」
 その声は彼のまったく知らないものではなかった。何だかエポニーヌの荒いつぶれた声に似寄っていた。マリユスは鉄門の所に走ってゆき、動く棒を押し開き、その間から頭を出した。見ると、若い男らしく思われる一人の者が、向こうへ走りながら暗がりの中に消えていった。

     三 マブーフ氏

 ジャン・ヴァルジャンの財布はマブーフ氏には何の役にも立たなかった。マブーフ氏はその子供らしい尊い謹厳さをもって、天の賜物をも決して受納しなかった。星がルイ金貨になり得るとは考えられなかった。天から落ちてきたものは実はガヴローシュか
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