ヘない。ところでその娘は、父親に隠れてお前に会ってるんだな。よくあることだ。わしにもそんな話はある、いくらもある。そしてお前はやり方を心得てるか。本気にならないことだ、深みにはまらないことだ、結婚だの正式の手続きだのに落ちてゆかないことだ。ただうまくさえやればいい。ふみはずしさえしなけりゃいい。すべりぬけるんだ、結婚してはいかん。古い引き出しの中にいつでも金包みを入れてる、元から人の好《よ》いお祖父《じい》さんに会いに行くんだ。そして言うがいい。お祖父さんこのとおりです。するとお祖父さんは言ってくれる。なにあたりまえのことだ。青春は過ぎ去るものだ、老年は砕け去るものだ。私も一度は若かった、お前も今に年取る。やがてお前にも孫にそう言ってやるような時が来る。さあここに二百ピストル([#ここから割り注]二千フラン[#ここで割り注終わり])ばかりある。これで遊んで来るがいい。それが一番だ。万事こういうふうになるのが本当だ。結婚するものではない。それかと言って女に手を出すなというんではない。どうだわかったか。」
マリユスは石のようになって一言も発することができず、ただ頭を振ってわからないという
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