ヘ何かわしに願いにきたと言ったが、いったい何だ、何のことだ? 言ってみるがいい。」
「あの、」とマリユスは深淵《しんえん》の中に落ち込みかけてる者のような目つきをして言った、「私はあなたに、結婚の許しをお願いに参りました。」
ジルノルマン氏は呼び鈴を鳴らした。バスクが扉《とびら》を少し開いた。
「娘を呼んでこい。」
それからすぐに扉が再び開いて、ジルノルマン嬢が、はいってはこないで身体だけを見せた。マリユスは黙ったまま腕をたれ、罪人のような顔をして立っていた。ジルノルマン氏は室《へや》の中をあちらこちら歩き回っていた。彼は娘の方に向いて言った。
「何でもない。これはマリユスさんだ。ごあいさつをするがいい。この人は結婚をしたいんだそうだ。それだけだ。もう行っていい。」
老人の切れ切れな嗄《か》れた声の調子は、ひどく激昂《げっこう》しきってることを示していた。伯母《おば》はびっくりした様子でマリユスをながめ、その姿もよくわからないといったふうで、何の身振りも言葉も示さず、暴風の前の枯れ葉よりも早く父の一息のために吹きやられてしまった。
そのうちにジルノルマン老人は暖炉に背を寄せかけ
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