驍フだ。お前は女のあとを追っかけてる、そんなことは言わなくてもわかる。わしは世の中のだれからも顧みられない。それだのにお前はわしに慈悲を願うのか。ばかな! モリエールだってそんなことは思いついてやしない。そんなことを言って裁判所を笑わせようというんなら、弁護士諸君、私は心からお祝いするよ。おかしな奴《やつ》らだ。」
そして百歳近くの老人は、怒ったいかめしい声で言い続けた。
「いったい、わしにどうしろと言うのだ?」
「私があなたの前に出ますのは、お心に逆らうこととは存じております。」とマリユスは言った。「しかし私はただ一つお願いしたいことがあって参りました。それがすめばすぐに出て行きます。」
「お前はばかだ!」と老人は言った。「だれが出て行けと言った?」
その一言は、「まあわしの許しを[#「まあわしの許しを」に傍点]乞《こ》え[#「え」に傍点]、わしの首に飛びついてこい[#「わしの首に飛びついてこい」に傍点]!」という心の底のやさしい言葉を言い換えたものであった。ジルノルマン氏はマリユスが間もなく自分のもとを去ってゆくに違いないと感じた。喜んで迎えなかったために彼を反抗さし、酷《きび
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